2026年09月17日

【決算質疑】谷戸のコミュニティ再生は「参加者数」だけで測れるの?地域が育つ物語の重要性(2026年9月17日都市整備分科会)


2026年9月17日、都市整備分科会における質疑です。
都市部まちなみ景観課が所管する「谷戸地域コミュニティ再生提案事業助成」について取り上げました。

■議論の発端:「参加者数」が少ないからダメなのか?

この事業の実績評価として、現状では「ワークショップ等の参加者数」や「開催回数」といった数値(定量指標)が用いられています。
私の前の高橋議員の質疑では、参加人数の多寡などを捉えて「もっと厳しい目線で事業効果を精査すべきではないか」という指摘も上がっていました。

しかし、私は以前からこの「参加者数で谷戸の事業を測る」というアプローチには違和感を抱いていたんですよね。

なぜかというと、谷戸地域には、階段や狭い坂道、車が入ることも難しい独特の地理的・空間的制約がそもそもあります。
実際、田浦のアーティスト村や月見台の取り組みでも、駐車場をあえて設けず徒歩での来訪を原則とするなど、「一度に大勢の人が押し寄せないこと」を前提に配慮しながら進められていることの答弁がありました

つまり、谷戸の再生事業は「そもそも大量の集客を想定していない」のが原点のはずです。それにもかかわらず、評価の物差しとして「参加者数」ばかりを見てしまえば、「人があまり集まっていないから効果が低い事業だ」という誤った結論に陥りかねません。

そして、「政策の評価」というのは、技術的にも非常に難しいものです。
それも踏まえて、質疑をしました。

■汐入「やとと」の取り組みが教えてくれる、本質的な価値

私が特に注目し、何年もそのプロセスを拝見しているのが、汐入町で活動されている「やとと」(https://yatoto.net/)などの取り組みです。
なお「やとと」は、今回質疑をした谷戸地域コミュニティ再生提案事業助成の令和7年度助成先ですが、このほかにも汐入には取り組みが複合的に存在します。
参考 タウンニュース2026.03.27 横須賀市汐入町"谷戸暮らし"体感する民泊
https://www.townnews.co.jp/0501/2026/03/27/830320.html

谷戸の空き家を活用し、オープンスペースを運営しながら、ものづくりができる民泊施設の改修などを進めるコミュニティが形成されています。

ここには、単発のイベント動員数では決して測ることのできない、豊かな価値が生まれているはずですよね。
挙げるならば、

  • 地域への自然な定着と信頼: 担い手の方々が時間をかけて地域に溶け込み、顔の見える関係性を築いていること。
  • 関係人口のハブ: コミュニティづくりやローカルな暮らしに感度の高い市外の人々が訪れ、谷戸のファンや関係人口として深く関わる接点になっていること。
  • 日常の居場所と安心感: イベントの日だけでなく、日常的にふらっと立ち寄れる場(図書室があります)があることで、多世代の交流や地域の見守りが自然と生まれていること。


イベントに100人集めることよりも、谷戸を愛し、日常的に立ち寄り、あるいは宿泊して地域と深く結びつく人々の結びつきのほうが、谷戸の持続可能性にとってはるかに大きな力になります。

■質疑のやり取り:定性的な「ナラティブ(語り・物語)」の記録を

議会では、課長および都市部長に対し、評価のあり方について私から問題提起しました。

▽加藤ゆうすけ
・この事業が目指している将来像に対して、計測している指標(アウトプット・アウトカム)がずれているのではないか。
・汐入の取り組み(やとと)は、まちづくりに感度の高い市外の人との接点になり、素晴らしいコミュニティが育っている事例。アンケート等で満足度などを定量化する工夫はもちろん、『どういう人が、どのタイミングで、どう関わったことでこの場が生まれたのか』という定性的なナラティブ(物語・プロセスの記録)を丁寧に事業評価として残していくべきではないか。それが今後、市内全体のコミュニティ再生を考える際の貴重な知見になるはず」

これに対し、都市部長からは前向きな答弁をいただきました。

●都市部長
定量的視点だけではなく、定性的な視点で事業を評価するということは、聞いてて大事だと思った。どういった内容になるかは検討するが、ご指摘の視点で検証していきたい。


■おわりに

行財政改革や事業の総点検において、客観的な数値をもとに事業を評価すること自体は極めて大切で、それが大前提だと私も思っています。

ただ、行政の設定する「目標数値」を見てしばしば感じるのは、
・「測りやすい数字(参加人数など)」だけを追っていないか
・事業が現場にもたらしている「本質的な成果」を見落としていないか
という点です。(もちろん、とても技術的にも困難なことではあります)


谷戸の斜面地にしっかりと根を張り、時間をかけて編み上げられてきた人のつながりや、日常の温かな風景は、いま市が設置している数値目標では補足しきれていないように思います。
事業を正当に評価し、横須賀の貴重な財産として次世代につなげていければと願っています。

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