2025年12月03日
【不適切な保育を行う放課後児童クラブへの実効性ある基準が、要綱に明記されました】2025年12月2日民生常任委員会
長年にわたり、横須賀市の放課後児童クラブ(学童保育)における不適切な保育・不適切運営の問題を、議会で取り上げ続けてきました。
■2019年03月11日【3月8日 教育福祉分科会(こども育成部)】
https://www.katoyusuke.net/blog/1903101924
■2019年03月21日【学童クラブでの児童預かり拒否について 2019年3月15日 教育福祉常任委員会】
https://www.katoyusuke.net/blog/1903202229
■2025年05月21日【ごく一部の不適切な運営者のせいで、横須賀市の学童保育全体のイメージが低下するのは残念である】(2025年5月21日)
https://www.katoyusuke.net/blog/2025052101
■2025年07月18日【不適切な学童クラブへの補助金停止、市の「本気度」は?】(2025年6月定例議会 民生常任委員会)
https://www.katoyusuke.net/blog/25071801
2019年から続く一連のやりとりでは、ごく一部の学童クラブにおいて、児童の安全が脅かされ、これに対して有効な手立てが打てないままになってしまう現状について質疑を繰り返してきました。
直近では、クラブ側の対応によって複数の児童が退所を余儀なくされたケースまで現れました。
しかし、
●不適切な保育を行ったクラブに補助金を交付しない基準がない
●改善が見込めない場合にクラブを排除するルールがない
という課題があり、その状況を変えるべく、議会で粘り強く提案・追及を続けてきました。
そして今回、 民生常任委員会(12月2日)での質疑で、ついに大きな前進を確認できました。
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■ 12月1日施行:補助金交付要綱が改正され、「不交付の基準」が明文化
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市が12月1日に施行した新しい放課後児童健全育成事業補助金交付要綱には、次のルールが新たに盛り込まれました。
《新設されたポイント》
●第3条第2項第4号
→ 法令に基づく「制限・停止命令」を2回以上受けた団体は、翌年度1年間補助金を受けられない。
●第3条第2項第5号
→ 以下に該当し、改善が見込めないと市長が判断した団体は、翌年度1年間補助対象外。
ア:不適切な言動を3年間で2回以上
イ:法令違反による命令1回以上+不適切言動1回以上
■【251201改正】放課後児童健全育成事業補助金交付要綱
https://drive.google.com/file/d/1-8txaI6rX6OLPnjrAfoFJmTTGKHVJAYD/view?usp=sharing
つまり、
「不適切な保育を繰り返すクラブには税金を出さない」
という仕組みが、ようやく明確化されました。
これは、横須賀市にとって大きな制度的前進です。
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■ 市は「過去3年間を遡って判断する」と明言
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私は委員会で、
「施行日が2025年12月1日だが、過去の行為はどう扱うのか」
と確認したところ、担当課長からは
「過去3年間を遡って判断する」
と明確に答弁がありました。これは非常に重要なポイントです。
「制度改正前に行った不適切な保育は数えない」という抜け穴を封じたことになります。
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■ 5月に新聞報道された問題クラブについて
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前回の質疑で取り扱った、今年5月21日の新聞で報じられた複数児童が退所を余儀なくされた不適切対応クラブについても触れました。
結果、
- 当該クラブはその後「廃止届」を提出
- すでにクラブが存在しないため「今回の改正要綱に照らして不適切言動に該当するかどうかは判断しない」
との答弁でした。
私から、
「存続していた場合は該当すると思うが?」
と尋ねたところ、市は「仮定の質問には答えられない」と慎重姿勢を崩しませんでした。
市も、様々な事業者と向き合いながら、事業者とともに本市の放課後児童クラブを守っていく立場ですので、事業者側から見た際に、過度に威圧的にふるまうことはできませんから、慎重であることは理解できます。
とはいえ、このケースが市を動かし、今回の基準整備につながったのは明らかです。
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■ 残された課題 ——「決定取消し」の基準は?
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私は当初から、不適切な保育が繰り返された場合の
●不交付(将来の補助金を出さない)
●決定取消し(すでに決定した補助金を取り消す)
の両方の基準整備を求めてきて、今回は不交付について明記されました。
市は今回、「決定取り消しは考えていない」との答弁でした。
理由として、 「年度途中での取り消しは、すでにかかった人件費などの扱いが妥当でなくなる」 という説明でした。
一方で、市は
- 不正申請であれば市補助金規則に基づき取消可能
- 不適切行為があれば停止処分により補助金算定期間から外すことは可能
とも述べており、実質的なペナルティは一定程度担保できる状態にはなったとしており、私も納得はしています。
ただ、「重大な不適切保育をしたのに、それが発覚し処分を受けるまでの分は満額補助」
という事態をどのように捉えるか、その基準は、今後も確認し続けるべき課題だと思っています。
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■ 市民と子どもたちの声が、市を動かした
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今回の制度改正は、私一人の力では当然実現しませんでした。
●被害を受けた児童のお声
●長年、不適切な運営に苦しんできた保護者の訴え
●問題の根深さを社会に伝えた報道
●安全な学童を求める多くの市民の声
こうした積み重ねが、市を動かし、制度として形になりました。
そして、もちろん、市職員ご担当者もまた、不適切な保育撲滅に熱心に取り組んでくださった当事者です。
悪いのは市ではなく、不適切な保育を繰り返すごく一部の放課後児童クラブなのですから。
これで、横須賀市の放課後児童クラブ行政が「不適切運営を許さない」方向に一歩踏み出した と言えます。
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■1 「不適切な事案が発生する放課後児童クラブへの対応について」のその後(福祉こども部子育て支援課放課後児童対策担当課長)
(1)補助金決定取り消しあるいは不交付にするための基準の策定を具体に検討した結果について
▽加藤ゆうすけ
それではかねてより質疑しております、不適切な事案が発生する放課後児童クラブへの対応について、伺いたいと思います。6月定例議会において、質疑した際に、「決定取消しとか、不交付にするための基準の策定を具体に検討を進めているところです」とご答弁いただいておりました。
昨日「12月1日から施行する」という形で、本市webサイトに、改正された放課後児童健全育成事業補助金交付要綱が掲載されていることを確認しました[1]。改めての確認ですが、今回、同要綱を確認いたしまして、第3条第2項第4号および第5号が追加されたことを確認しましたが、こちらがかねてからおっしゃられていた「「決定取消しとか、不交付にするための基準の策定」にあたるということでよろしいでしょうか?
●放課後児童対策担当課長
はい。以前の答弁の際に、決定取り消しとか不公布にするための基準の策定として検討した結果のものになります。
(2)5月に新聞報道があった不適切な事案が発生した放課後児童クラブは、補助金不交付となるのか。
▽加藤ゆうすけ
はい。ここで、補助対象としない期間を定めること=不交付にするための基準、ということなのだ理解しました。
追加された第4号については、「前年度までの過去3年間において、第2号に該当する命令を2回以上受けた推進団体」については「命令を受けた日の属する年度の翌年度の初日から1年間」補助対象としない、とされています。
ここで、第2号は、「児童福祉法第34条の8の3第4項の規定により、放課後児童健全育成事業の制限又は停止を命ぜられた推進団体」とあるので、「この法律若しくはこれに基づく命令若しくはこれらに基づいてする処分に違反した」団体、「又はその事業に関し不当に営利を図り、若しくはその事業に係る児童の処遇につき不当な行為をした」団体(法第34条の8の3第4項)ということになると思います。
今年5月21日に、新聞記事にて、放課後児童クラブ側の不適切な対応により、複数の児童がクラブ退所を余儀なくされた横須賀市の事例が紹介されていた[2]件についてですが、この放課後児童クラブは、「放課後児童健全育成事業の制限又は停止を命ぜられた推進団体」にあたるのでしょうか?
●放課後児童対策担当課長
当たらないです。
▽加藤ゆうすけ
続いて、第5号については、
「次に掲げるいずれかに該当する推進団体で、改善指導を行っても今後の改善が見込まれないと市長が判断した推進団体」については、 「改善が見込まれないと市長が判断した日の属する年度の翌年度の初日から1年間」、補助対象としないとし、
「ア 前年度までの過去3年間において、第3号に該当する言動を2回以上行ったことが認められた推進団体」
「イ 前年度までの過去3年間において、第2号に該当する命令を1回以上受け、かつ、第3号に該当する言動を1 回以上行ったことが認められた推進団体」
として、2つあげています。先に挙げた、今年5月21日の新聞記事の事例の放課後児童クラブは、このアあるいはイに該当しますか?
●放課後児童対策担当課長
はい。当該クラブがですね。その質疑の後に廃止届を提出して、もう既にクラブが廃止されている状態ですので、特に該当の是非については判断をしていません。
▽加藤ゆうすけ
こちら、今回の事例を機に作っていただいた条文だと思っております。
該当の是非について判断しないのは、当該クラブが既に廃止されているためということなので、その部分は仕方がないのかなと思うんですが、仮に存続していた場合は該当はするんでしょうか。
●放課後児童対策担当課長
えっと、ごめんなさい、ちょっと仮定の質問としては答えづらいんですので、すいません。
あくまでも、廃止されているので補助対象にならないっていうようなお答えになります。
▽加藤ゆうすけ
こちら、本要綱の施行が2025年12月1日なので、これ以前の第3号該当行為について不問として来年度も補助対象となっていくようなものになるのか、それとも、(施行は)2025年12月1日だけれど、もし該当するような行為をやっていたクラブがほかにあったとして、来年度の補助対象とするかしないかの判断に入ってくるのかというところで伺いたいんですが、そちらはいかがでしょう。
●放課後児童対策担当課長
はい。過去3年間ということなので、施行日からなので、その分は遡って対象となります。
▽加藤ゆうすけ
またこれもちょっと条件分岐をする質問なんですが、この要綱に基づいて補助対象から外れた放課後児童クラブが出たときに、その放課後児童クラブの運営の親会社あるいは推進団体の取りまとめの団体みたいなものがあって、複数のクラブを運営して補助を受けていた際に、もしここが外れた場合、それ以外のクラブについては、この要綱に基づくとどのような取り扱いになりますでしょうか。
●放課後児童対策担当課長
はい。不適切な言動があった場合に、それが全体に及ぼす影響のものなのか、個々のいろいろな事由が想定されます。なので、基本的にはクラブ単独での判断ということで考えていますので、それ以外のクラブについては、そのクラブ自体の運営に問題がなければ特段補助対象としないということは考えていません。
(3)補助金「決定取り消し」の明確な定めはつくらないのか。
▽加藤ゆうすけ
続いて、「決定取り消し」という部分なんですが、当初「決定取消しとか、不交付にするための基準の策定を具体に検討を進めているところです」とご答弁いただいておりました。
今伺ってきた改正要綱の追加条文は、「補助対象としないこと」の条件なので、不交付にするための未来に向けての基準かと思います。
もう一方の、「決定取り消し」は、一度交付決定をした企業・推進団体に対して、その決定を取り消す という部分なので、過去にさかのぼる部分になるんです。こちらの具体的な基準についてはいかがですか?
●放課後児童対策担当課長
以前に答弁した際には、決定取り消しというところももちろんお答えしたので、その部分についてもあわせて検討しました。
ただ、不適切な言動の有無というところはあるんですけども、例えば、年度初めから12月ぐらいまで運営をして、職員も配置して運営した中で不適切な言動が出てというところの中で、その間に配置した人件費とかそういったところを、決定取り消しにしてしまうと、全額、逆にこう補助金として支払えなくなってしまうので、それはちょっと過度な、そもそもちょっと妥当ではない部分があるかなというところで考えていますので、決定取り消しというところでは考えていないです。
ただ、もちろん、そこが余りにもその状態、その不適切な言動が起きたときに、先ほどちょっと不適切なクラブでも該当しないということはお答えしませんでしたけれども、例えば停止処分をするということは可能性としてはありますので、その時点で一回例えば(補助金交付の)執行を止めるということはあり得るかなとは思います。
▽加藤ゆうすけ
今回、要項を改正いただいて、不交付にするための基準はしっかり明確になって、不適切な放課後児童クラブをしっかりとなくして児童を守っていくためには一歩前進できたと思ってますので、その点は感謝を申し上げたいと思います。
今御説明を伺ってる限りでは、決定取消しについても、その、別途、横須賀市補助金等交付規則の中に決定の取り消しは定められていて、偽りその他不正の手段により補助金等の交付を受けたときというのは、過去にも取り消しというのはあったかなと思います。
で、これについて、(同交付規則)第13条3項の中で、その他っていうところの中で判断すれば、決定取り消しの根拠がないわけではないと思いますので、こちらも御対応いただけるものと思っておりますが。最後に、今の私の理解で合っているのかどうかという部分について、こちらについて、本件についてのご所見をいただきたいと思います。
●放課後児童対策担当課長
少しちょっと、もしかするとずれている部分があるといけないという意味でちょっと御説明させいただきますが、補助金の交付要綱の中での不正等があった場合ということなので、その間、基準に沿って適切に運営していた部分について取り消すということは基本的には考えていないです。不正、というのは虚偽の申請とかそういったものが主に当たると思いますので。
そこまできちんとやっていたけど、何らかの不適切な言動があって、その時点で何か判断しなければいけないってなったときに取り消しして、それまでの期間を全部対象としないというようなことは現時点では想定はしていませんが、不適切な言動が発生した場合には速やかにその言動が改善するように指導しますし、指導が難しければ処分を下すということも可能性としてはありますし、処分として停止している期間については補助対象の算定期間からは外れますので、結果として、ペナルティーとして補助金が入ってこないであったり、それが積み重なった場合に翌年度に交付されないというようなことはあるというふうに認識をしていますので、それでよければ、はい、そういった形になります。
[1]https://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/2645/documents/houkagojidouhojokinyoukour071201.pdf
[2] https://sukusuku.tokyo-np.co.jp/education/100078/