25.11.19 Wed
【「若者のため」の議論なのに、なぜ「地域の担い手確保」が主語になるのか】(2025年11月18日未来を担う若者支援検討協議会+11月19日末冨芳先生の講義)
■「若者のため」の議論なのに、なぜ「地域の担い手確保」が主語になるのか11月17日、未来を担う若者支援検討協議会が開催されました。 今回も、以前のブログで指摘してきた問題構造がそのまま露呈する、残念な内容でした。■■前回まで■■8月19日:「どうやって若者の声を聴くのか」「若者の声をきいて、どうするのか」について話し合う時間https://www.katoyusuke.net/blog/2508210110月2日:協議会の設置目的に「若者の声を施策に反映させる場」とあるにもかかわらず、「若者にプレッシャーになるから若者に公の場での意見表明機会は不要」という声がでてくるhttps://www.katoyusuke.net/blog/2510020110月31日:「今以上に財政負担となるようなものはやるべきでない」若者政策は「コスト」なのでしょうか?では、なんのために、この会議を…?https://www.katoyusuke.net/blog/25103101■■■■■■■■そして今回。 同じ構造がさらに強まり、若者政策の目的が完全にズレ続けています。■■■■今回の使用した資料■■■■■02-(資料1)本協議会において今後検討する取組https://drive.google.com/file/d/1jYtWBKao9m8tgYK2rF_ndxZ6VPTlauQz/view?usp=sharing■03-(資料2)前回の本協議会にて決定した以外の検討すべき取組https://drive.google.com/file/d/1_HFSyjeN-dAqv3Kl1-zqvgW8Hz8JAkQ3/view?usp=sharing■04-(資料3)広報広聴会について(案)https://drive.google.com/file/d/1P3K4usbx9W95XpmakcXcE6U9I4JGA_5X/view?usp=sharing■■■■■■■■■■■■■■■■■ 1 結局「若者に地域のために働いてほしい」のか?■■■■■■■■■■■■■■■■今回、自民党と公明党から出された新たな提案は次の2つです。若者の地域参画を促進する(自民)若者が地域活動に参加しやすい取組(公明)一見すると「若者のため」に聞こえます。そして、私も、大切なことだと思っています。しかし、会議での質疑が進むほど、 「地域が担い手不足だから、若者に入ってきてほしい」という側面ばかりが前に出てきてしまいます。特に顕著だったのは次のような発言です。自治会が若者たちに入ってもらいやすいように地域が支えて、過保護にするということがゴールではない若者が町内会に参加するメリットはなければならないが、メリットを享受する分、負担も責任とともに負うという関係性は大事いずれも、若者自身のニーズではなく、 地域側の都合をどう若者に理解させるか という発想から出ているものですよね。そもそも、まだ若者に話すら聞いていない段階ですし…。私は、会議では次のように指摘しました。「地域のために若者が働け」ではなく、「若者のために地域が何をできるか」が出発点であるべきですよね。これは当たり前の前提だとおもうのです。 しかし、この「当たり前」を共有するまでに、毎回長い時間がかかっています。■■■■■■■■■■■■■■■■■ 2 「若者の負担を増やすだけでは?」という根本論点が共有されない■■■■■■■■■■■■■■■■例えば、地域活動に参加できない理由としては、非常にシンプルに仕事が忙しい生活が不安定子育てで余裕がないそもそも地域活動のメリットがないといった本質的な課題があります。ところが今回の議論でも、「若者が悪いわけじゃないけど…」とはしつつも、「参加したら楽しいのに、参加しないのはもったいない」という論調が続きました。たしかに、参加すれば楽しいです。私は楽しんでいます。しかし、ここは若者政策を議論する場です。議論の出発点が 「若者支援」ではなく「地域活動支援」になっている ことは、やはり違和感です。なにより、そもそも、非常にシンプルに、若者は生活に忙しくて参加できないのに、「楽しいから参加しようよ!」では、負担の純増です。■■■■■■■■■■■■■■■■■ 3 若者政策は、「若者みずから」を軸にしなければ成立しない■■■■■■■■■■■■■■■■私は今回も、繰り返し次の視点を提起しました。若者の利益・メリットのない施策は定着しない当事者抜きで制度設計は絶対にしてはいけない地域活動より先に、若者の困難を直視すべき若者自身が「やりたい」と思える環境づくりこそ政策の核心若者を地域の労働力として扱う発想を捨てること自治会問題は深刻です。 しかし、それを若者政策で肩代わりさせようとするのは筋違いです。■■■■■■■■■■■■■■■■■ 4 財源や議会の取り組みは、後ろ向きな状況に■■■■■■■■■■■■■■■■今回、会派一市民からは、以下の2つの論点を提案しました。若者政策を実行するための財源確保策議会自身の若者政策どちらも、当たり前のことしか、書いていないつもりです。しかし、討議の中では 「財源を先に決めると使い切らなくちゃならなくなっちゃう」 「予算ありきは良くない」 という反応が大勢を占めました。制度を作れば必ず人件費も発生します。「新たな取組を行う以上、そのことに関連して職員が動けば人件費が発生するため、財政負担を伴わない新たな取組というのはその性質からしてあり得ない。」と記している通りです。 財源議論を避けたまま会を重ねることは、実現可能性を自ら放棄することに等しいはずです。結局、「取り組みを1つ1つご議論をいただきながら進めていく中で、例えば予算措置が必要になった時に、それを全て否定するのではないという観点で」みたいなものすごい条件付きの合意として、今後検討すべき議題にのこりました。なぜここで空転してしまうのか…。さらに、議会自身の取り組み、については、「主権者教育は議会が取り組むべきではない」という意見まで飛び出しました。これには本当に驚きました。隣に座っていた長谷川議員(研政会)も驚いたようで、以下のようにきちんと議論してくださいました。息遣いがわかるようにものすごく一生懸命メモとったのでそのまま載せます:「この議会が目指す方向っていうのは、あくまで開かれた議会で市民の皆さんに見てもらって、とりわけ若い皆さんに見てもらって、その中で、議会ってこういうもんなんだ、こういう生き生きとした議論してるんだっていうようなイメージを持っていただければありがたいんだけど、こんなことやってんのかよって思われるんだったら見せたくないよね。そういう話なんですよ、これは。 だから、議会を見せた時に、こどもたちが、議会っていうのは、そうか、未来に向けて大事なとこなんだと、未来を作るうえで大変大きな場所なんだっていう認識を皆さんに持ってもらうならば、それは見てもらって、もっと皆さんに想像力を、夢を持ってもらう。夢もないような議会だったら見せられないよね。そういう点だと思う、ここは。 だから、そういう観点で言うならば、やっぱりこれは我々も含めて自省しながらも、やっぱり見せながら、そして議論もしながら、どこを、どうしたら議会良くなるのかな。どうしたら君たちが議会に来たいと思うようなところになるかな。選挙に行きたいと思うようになるかな。まず1番は、選挙に行きたいと思うような議会かどうかって、そこもあるよね。だから、そこも含めた議論とするのは大きな議論になってしまうんだけども、我々はここで議会の取り組みって言うならば、これは否定はできないだろうなと思います。」■■■■■■■■■■■■■■■■■ 5 広報広聴会(若者意見聴取)が実施されるが…■■■■■■■■■■■■■■■■資料3の通り、来年4月に若者向けの意見聴取会が実施される見込みです。(まずこの意見聴取をやってから議論に入るべきだ、とは今でも思っていますが、どんなタイミングでもやったほうがいいのは間違いありません) しかし、現状の議論の流れを見ると、集めた意見が「地域の担い手確保」へ都合よく利用されるのでは?との懸念がどうしても私はぬぐえません。若者政策を冠して、地域の担い手確保を強いるようなことになれば、目も当てられません。若者の声を聞く場を設けるのであれば、 その声を、若者の視点で政策に反映させる体制がなければ意味がありません。しかも、なぜか対象者が素案の時点ですでに「概ね18歳から29歳未満の若者」に絞られている。前々回の会議では、「対象年齢は幅をもたせて考えていこう」といったところで議論は終わっていたはずなので、まだ議論の余地はあって、私は「概ね15歳から」として、高校生は入れるべきだと考えています。高卒後の市内就職の話なども議論のテーマにするとなれば、なぜ高校生から話を聞かないの?となりますよね。■■■■■■■■■■■■■■■■■ 6 この協議会は、いつ「若者」を主語にできるだろうか■■■■■■■■■■■■■■■■色々と記しましたが、本当に、私、毎回同じ指摘をしています。 しかし、今回もまた、若者自身の声が出発点になっていない地域側の課題が主題になってしまう若者―大人世代の負担の不均衡に対する理解が進まないという問題が続いています。この協議会がめざす若者政策とは本来、若者期にある市民の利益が守られ、若者の取り組みを周りの人が応援して、その結果若者が地域や社会の取り組みに協力してくれる(かもしれない)という順序なはずです。決して、地域運営の人手不足を補うための若者活用策ではないはずです。■■■■■■■■■■■■■■■■■ 7 翌日の議員研修会で、末冨芳教授が語った「若者政策」■■■■■■■■■■■■■■■■偶然ですが、協議会の翌日、11月18日に行われた議員研修会では、日本大学・末冨芳教授から 「こどもまんなか」「若者まんなか」政策とは本来どうあるべきか についての講義がありました。これも当たり前の話なのですが、教授が強調した内容は、まさに私が協議会の場で繰り返し主張してきた 「こども若者本人の権利と最善の利益が出発点」 という論点でした。末冨先生のお話を聞いた議員全員が、「いまの協議会の議論って、 国が掲げる「若者まんなか」「こどもまんなか」政策とは真逆の方向に進んでいるのではないか…?」と気づいてもらえたらいいな…と思いながら、学びを深めました。